シニアを「負担」にしない、働き方の「再設計」
人手不足が新たな常態となる中、シニアの力をどう生かすかが社会全体の問題になってきた。年金財政の逼迫もあり、政府は65歳以上の継続雇用を政策課題として打ち出す。だがなし崩し的な雇用延長は企業の重荷となり、競争力をそぎかねない。
(中略)
定年制がないライフネット生命保険は昨年4月に人事制度を見直し、1年間の技術や意識の成長評価を賃金に反映するようにした。65歳定年のSCSKは、シニアの活躍次第で500万円近くも年収が変わる。
成長を目指して成果を上げれば、年齢を問わずに報いる。体力などに応じ、緩やかな働き方も用意する。シニア雇用の実現に求められているのは、従来型の人事・賃金制度や働き方の「再設計」にほかならない。
(日本経済新聞 1月10日)
シニアの雇用を企業の負担とせず、一方で、シニアの意欲も高めるには、成果に基づく人事・給与体系にすることだ。それが分かっていても実現に時間がかかってきたのは、成果主義にすることへの抵抗があったからだ。多くの大企業は、年功と成果を組み合わせた人事評価を行っているが、シニアだけでなくすべての世代に対して成果を重視すれば、成果に比べて賃金が高いとされる50代の報酬を引き下げることになりかねない。また、極端な成果主義は社員を短期的な業績の追求に走らせ、企業の長期的な利益に寄与しないという懸念もある。
しかし、だからといって、60歳以上になったという理由だけで給与を一律に引き下げたのでは、シニアの意欲を引き出すことはできず、大きな成果も期待できない。今までは、そもそもシニアに成果を期待しない企業も多かったが、労働生産人口が減少を続ける中、今や、シニアを「負担」ではなく成果を生み出す人材と捉えなければ、企業の競争力を維持できない時代だ。今後、ますます、シニアを対象に、日本版成果主義の構築に挑戦する企業が増えていくだろう。