シニアやパート社員が流入 厚生年金、被保険者が増加
厚生年金の適用事業所や被保険者数が増えている。被保険者の数は2018年6月時点で3989万人となり、1年前に比べて76万人増加、2年前より218万人の大幅なプラスになった。国民年金の被保険者は減少しているものの、厚生年金の人数は増えており、年金制度全体ではほぼ横ばいとなっている。
増加の要因は「60歳以上のシニア世代とパート女性の加入」とニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主任研究員は指摘する。中でも60~69歳は14年の公的年金の財政検証で作成された加入者見通しを最も大きく上回っている年齢層だという。国は高齢者や女性の就労を促しており、その結果が人数に表れた。企業の間で人手不足感が強まっているのも追い風だろう。
注目は短時間労働の被保険者だ。厚生年金適用の基準が16年10月に拡大され、パートタイムのシニアや女性たちも加入できるようになったからだ。
(日本経済新聞 11月3日)
政府は継続雇用の年齢を70歳まで延長する検討を進めているが、労働市場では既に70歳までの就労が進行している。60~69歳の厚生年金加入者の増加は、その影響が顕在化した結果だ。
年金財政としては、一般的に、被保険者の増加は、現在の保険料収入が増える分、将来の年金支払が増えるので、トントンと言われている。しかし、高齢者については、年金支払の年数が短縮される分、年金額が増額され、かつ、企業が保険料の半分を負担する分、自身の支払が軽減されるなど、全体としてはメリットの方が大きい。
企業にとっては、負担が増えるが、高齢者の雇用拡大を目指すなら、厚生年金加入者の拡大は避けて通れない。