70歳雇用へ企業に数値目標 政府、計画義務付け検討
政府は継続雇用年齢を65歳以上に引き上げる法改正に向けて、企業に対して70歳までの雇用を促すための計画の策定を義務付けることを検討していることが19日、分かった。計画に盛る具体的な数値目標の項目などは今後詰めるが、65歳以上の高齢者を一定以上雇用することなどを求める見通しだ。安倍晋三首相を議長とする「未来投資会議」で近く議論する。
(日本経済新聞 10月19日)
65歳までの雇用確保は義務となっているが、継続雇用年齢の70歳への引き上げについては、義務ではなく、努力目標とすることで議論が進んでいた。しかし、政府は、努力することは義務としたい意向だ。企業にとって、「70歳までの雇用を促すための計画」を策定するということは、将来、継続雇用年齢を70歳へ引き上げることを約束することになる。人手不足に悩んでいる企業では高齢者の雇用を拡大する余地は大きいが、逆に、余剰人員を抱えている企業では対応が難しい。
負担の増加を懸念する企業は、おそらく、高齢者の給与を引き下げて人件費全体の上昇を抑制しようとするだろう。しかし、高齢者の給与水準が下がれば、働く意欲を持つ高齢者は少なくなる。結果、政府が期待するほどには、高齢者の雇用は拡大しないかもしれない。
したがって、政策としては、企業内で継続雇用年齢の引き上げだけでなく、企業間の労働力の流動性拡大にも注力すべきだ。特に、高齢者の転職のハードルを低くすることは、人手不足が深刻な業界への労働力の移動を容易にする点において重要な施策となる。