首都圏の郊外、団塊引退で所得減
2016年と11年の市町村別の1人当たり所得の変化を首都圏で調べると、景気拡大期にあって所得増が目立つが、外縁状に所得減の街が広がる。通勤電車の始発駅で「座って通勤できる」とかつて人気を集めた郊外の自治体に多く、少子高齢化などにより所得が減少しているためだ。
(日本経済新聞 9月29日)
首都圏の郊外は、東京の昼間人口が急速に拡大した時期に開発された。団塊の世代が初めて自宅を購入した頃だ。地域に住む人の年齢がひとつの世代に集中しているため、その世代が退職すれば、地域の所得の減少は免れない。
地域の所得の減少は、小売業の売上の減少をもたらす。百貨店業界では、都心の店舗は外国人観光客によるインバウンド需要を享受して好調だが、外国人の来ない郊外の店舗は不振が続き閉店を余儀なくされている。三越伊勢丹は相模原店と府中店を19年9月に閉店することを決めたが、これもこの流れに沿った動きだ。
一方で、地域の所得の減少は、不動産価格の抑制につながっている面もある。都心に比べて、介護施設の数は多く、費用は安い。このため、都心に住む高齢者の中には、郊外の施設に入居を希望する人々もいる。また、テレワークを推進している企業では、首都圏郊外にサテライトオフィスを展開する動きが活発だ。住宅が都心に回帰するだけでなく、職場が郊外に展開することで職住近接が加速している。こうした郊外の役割の変化が進めば、郊外に住む高齢者にとって、地域での雇用の機会はむしろ増える可能性もある。所得の減少もあながち悪いことばかりではない。