早期退職が米男性の寿命を縮める?
米国では、65歳になる前に引退することを夢見ている人が多い。実現できる人はほとんどいないが、それでも多くの人がそうすることを願っている。
ただ、早く引退することは早期死亡につながるとの指摘もある。そうなのだろうか?米コーネル大学とオーストラリアのメルボルン大学が共同で行った研究結果は、その可能性を示唆している。
研究によると、米国の男性死亡率は、62歳で目立って上昇している(米国人の平均寿命は79歳くらいだ)。人口動態がさまざまな要因によって変化し得ることを忘れてはいけない。ただ、62歳の死亡率が2%上昇していることは、科学者によれば「統計的に有意な」変化だ。つまり、これは偶然起きていることではない。(Forbes Japan 7月16日)
年齢で給与が決まらないとされる米国でも、60歳を過ぎると前職と同水準の給与を得るのが難しくなる。年金を満額受給できるのは大抵の場合66歳からだが、その前の62歳前後から年金を受給し始める人が多いのはそのためだ。
研究者は、米国の男性死亡率が62歳で上昇している原因のひとつに、62歳で仕事を辞める人が多いことを挙げている。仕事を辞めることで、生活環境が変化し、収入も下がる。この変化に心がついて行かないと、薬物やアルコールに依存するなど不健康な生活習慣に陥り、それが、寿命にまで影響を与える可能性が指摘されている。
こうした不健康な生活を避けるには、社会的に高齢者の雇用の機会を増大させることが役に立つが、同時に、高齢者自身が多様な生き方を受け入れる心の余裕を持つことも重要だ。収入は大事だが、収入以外の点で生き甲斐、働き甲斐を感じる仕事はある。それらの仕事にやり甲斐を感じることができるかどうかは、心の持ち様の問題だ。日本では、働く理由として「生き甲斐」を挙げる高齢者が多い。ひょっとすると日本の高齢者の方が米国人より柔軟性があるのかもしれない。