定年後の勤務先 「継続」が8割超

厚生労働省がまとめた2017年6月時点の高年齢者の雇用状況によると、過去1年間に60歳で定年を迎え、勤務先に引き続き雇用された人(子会社や間連会社を含む)は84%に上った。転職や起業などで継続雇用を希望しなかった人は16%にとどまった。
 定年まで勤め上げた会社なら、上司や部下など周囲が定年者の能力や性格をよく理解し、継続雇用後も働きやすい職場環境を提供してもらえるケースが多い。福利厚生制度も引き続き利用できる企業が目立つ。
 一方、転職先では人間関係や社内慣習、システムなどに慣れるまで気苦労を伴う。大半の会社員が定年後も継続雇用を選んでいるのは、こうした事情も理由の一つとみられる。
(日本経済新聞 6月21日)

60歳で定年を迎えた人の多くが同じ勤務先で引き続き雇用されることを望んでいるのは事実だ。給与は下がるのが一般的とはいえ、労使双方が互いをよく知っている環境の方が将来の不確実性は低い。安定を好む高齢者にとって、現在の職場に留まることは、自然な選択ともいえる。

むしろ、今回の厚労省の調査で特筆すべきは、継続雇用を希望しなかった人が、少ないとはいえ、16%いたことだ。他の世代の転職率と比べて、16%という数字は決して小さくはない。「16%にとどまった」というより「16%にのぼった」と受け止めるべきだろう。今後、人手不足の深刻化とともに高齢者の新規採用が増えれば、継続雇用を希望しない人の割合はさらに増加する可能性がある。高齢者の活躍の機会を増やすには、定年延長の促進だけでなく、高齢者の労働力の流動化に対応する施策も必要だ。