住友商事、テレワークを全面導入 4000人対象
住友商事は今秋、東京本社でテレワーク制度を全面導入する。育児や介護中の社員のみでなく、全社員の約4000人が対象となる。三井物産も6月下旬から3カ月かけて導入に向けた検証を始める。勤務の場所と時間を柔軟に選べるようにして生産性の向上を図る。商社は時差のある海外との商談も多く、多様な場所で働ける環境づくりが広がってきた。
住商は9月に東京都中央区から千代田区に本社を移転する計画で、その後に制度を始める。2日間の勤務時間(14時間30分)の相当分を毎週テレワークに充てられる。前日までに上司に勤務時間と内容、場所を報告する仕組み。
(日本経済新聞 6月13日)
欧米では、テレワークは普通であり特別な制度ではない。特に、2001年9月11日に発生した米国の同時多発テロ以来、テレワークは急速に普及した。当時、テロの標的となったニューヨークのワールド・トレード・センターには、金融機関の本社機能が集中していたため、多くの金融機関が機能停止に陥り、組織の再構築に長い時間を要した。このため、企業の主要な組織と人員を物理的に一カ所に集中させることのリスクが意識され、事業継続の観点から、物理的に人員を分散させるテレワークへの移行が加速することになった。
翻って日本では、インターネットの普及と人材不足によって、人材確保の手段としてテレワークが普及してきた。その動きは、比較的緩慢だったが、最近ようやく顕著になっている。日本でも今後、商社に限らず、多くの業界でホワイトカラーの職種がテレワークを取り入れるだろう。
ただ、それでも日本企業の多くは、テレワークを特別な制度と見なす傾向から抜け出していない。住商が、テレワークの時間を2日間の勤務時間に制限したり、前日までに上司に勤務時間と内容、場所を報告する仕組みにしたりしているのは、その証左とも言える。これでは、外国人のエリート社員が抱く違和感を拭いきれない。テレワークを普通の制度とするならば、逆に、次に出社する日時を会社に事前報告する仕組みにするべきだ。