浮上する70歳定年制 人手不足で「高齢」問い直す

政府は15日の臨時閣議で、2018年の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)や成長戦略を決めた。焦点となったのが人手不足への対応策だ。外国人労働者の受け入れ拡大とともに、もう一つ目を付けたのが65歳を超えても健康な高齢者。働く意欲をそぐ年金の仕組みを見直し、長く働く人を増やして人手不足を補う。骨太に打たれた高齢者活用の布石を読むと、「70歳定年制」が視野に入る。
(日本経済新聞 6月16日)

少子高齢化による労働力不足が経済成長の阻害要因として懸念される中、政府は、月収と年金月額の合計が46万円を超えると年金が減る在職老齢年金の見直しや年金の受給開始年齢を70歳超まで延ばせる制度の導入のなど、65歳を超えた高齢者の就労意欲を高める施策の検討を進めている。

これらの施策は、現行の制度変更で対応できることから、コンセンサスさえ取れれば実現の可能性は高い。ただ、一方でその効果も限定的だ。たとえば、現在の制度の下で年金の受給年齢を70歳まで延ばしている人の割合はそれほど大きくない。仮に、受給年齢を70歳超に延ばすことができたとしても、それだけを理由に働き続けようと思う人は限られている。

より多くの高齢者が働き続けようと思うようになるには、個々の高齢者の能力をより発揮できる多様な働き方を用意する必要がある。国は、公務員の定年を65歳に延長するが、単に、定年を延長するだけでなく、高齢の職員が働きがいを実感でき、高い付加価値を生み出すことのできる雇用体系を公務員の人事制度として自ら設計すべきだ。そうすれば、民間も定年延長に追随するだろう。