定年退職者を雇用「フレッシュシックスオー」茨城
年金の受給年齢引き上げや人手不足などを背景に、高齢者も働き続けられる環境が求められる中、定年退職した技術者を新規採用し、毎年黒字を計上する会社が県内にある。神栖市知手中央10の「フレッシュシックスオー」は社員約100人のほとんどが65歳以上で80代もいる。「人は情熱がある限り現役」のモットーの下、ベテランたちが生き生きと働いている。
(中略)
同市と鹿嶋市の鹿島灘沿岸では、1960年代後半以降、鉄鋼や石油化学の巨大コンビナートで構成する鹿島臨海工業地帯が整備され、技術者が大量に移り住んだ。そうした人々が定年を迎え始めた2001年7月に同社は設立された。社名は60歳でも新鮮な気持ちで第2の人生を活躍してほしいとの願いを込めた。
(中略)
業務は工場の設備点検・メンテナンスが中心だったが、次第にプラントの設計・施工や技術者派遣まで拡大。現在、神栖市の本社のほか、筑波(阿見町)、神奈川(横浜市)、岡山(岡山県倉敷市)、九州(北九州市)の計5事業所で計約100人が働く。
(毎日新聞茨城版 6月8日)
以前、大手エンジニアリング会社からAIを使ってプラント設計のノウハウを設計支援システムに組み込むことを依頼されたことがある。高度成長期に日本全国に建設されたコンピナートや石油化学プラントも、今や国内で新規に開発されることはほとんどない。むしろ、時代の流れは設備縮小の方向にある。このため、プラント設計のノウハウの伝承が年々難しくなってきた。AIによるノウハウのシステム化はその解のひとつだ。
ただ、AIですべてのノウハウを継承することはできない。特に、多様な分野の知識を組み合わせて新たな条件の設計を行う応用力は、人の創造性に負うところが大きい。
60歳以上の定年退職者を中心に雇用し、そのノウハウをサービスとして組織的に提供しているフレッシュシックスオーの活動には、高齢者の雇用拡大だけでなく、ノウハウを企業と世代を超えた共有・継承という社会的な意義もある。