働く高齢者、年金減額縮小
政府は一定の収入がある高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度を見直す方針を固めた。6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に明記する。将来的な廃止も視野に高所得者の年金減額の縮小を検討する。少子高齢化の進展で生産年齢人口の急激な減少が見込まれており、高齢者の就労意欲をそぐ同制度はふさわしくないと判断した。2020年度の法改正を目指す。
(日本経済新聞 5月25日)
現行の在職老齢年金制度では、60~65歳未満が月28万円、65歳以上は月46万円を超えると厚生年金の減額・支給停止の対象となる。それほど高額所得者でなくても年金が減らされることになり、フルタイムで働くと対象になってしまう高齢者は多い。支給停止の対象者は126万人だが、対象にならないように労働時間を制限している人は、さらに多いだろう。
もともと、高所得者の年金を減額する制度は、年金支出を抑制することを目的としていた。しかし、その制度によって高齢者の労働時間が抑制されれば、経済成長も制約され、税収も伸びない。結果、歳出を抑制する以上に、歳入が減少する懸念もある。少子高齢化が深刻化するこれからは、生産年齢人口に入らない高齢者も労働市場へ参加することが重要だ。高齢者の就労意欲を維持することを重視し、年金減額の縮小だけでなく、廃止も視野に入れた検討をすべきだ。