中高年の転職、再就職促進 厚労省が中途採用などで指針
中年世代の転職や高齢者の再就職を支援するため、厚生労働省は2日までに、行政や企業が取り組むべき方策をまとめた新たなガイドライン(指針)を策定した。
従来の新卒一括採用や終身雇用に縛られず、中途採用や再雇用を推進することで生産性の向上につなげ、年齢やライフステージの変化に応じて仕事を選びやすくする狙い。
指針は、日本型雇用システムの中で、年齢が上がるにつれて、転職のハードルが高くなっていると指摘。転職や再就職がしやすい環境になれば、働く人が有効に能力を発揮でき、生産性向上にもつながると意義付けた。
具体的には、企業が取り組むべき施策として「元の職種にとらわれない採用」や「自社から転職した者の再入社制度の検討」「中途採用者を賃金や昇進などで公平に処遇すること」を挙げた。
(サンケイビズ 4月3日)
中高年の転職、再就職が若年層に比べて厳しいのは、市場原理に基づく要因によるところが大きい。日本の賃金は、年功序列の要素が減少しているとはいえ、まだまだ、若年層よりも中高年層の方が高い。同じ能力の人材ならば賃金の安い若年層を採用しようとするのは、企業にとっては合理的な判断だ。
したがって、中高年の転職、再就職を促進することが目的ならば、若年層の賃金を上げて、中高年層の賃金を下げるのが効果的だ。実際、年齢による賃金格差が比較的小さい欧米では、若年層の失業率の方が中高年層より高い。同じ賃金ならば、教育しなければ使えない若者よりも経験とノウハウを持った中高年を採用することが市場原理に適った判断だからだ。
しかし、日本経済にとっての課題は生産性の向上であって、中高年の転職、再就職の推進はその手段のひとつに過ぎない。賃金体系を変えて中高年の転職、再就職を増やしただけでは、社会全体の生産性は向上しないだろう。生産性を向上させるためには、現在の職場で能力を十分発揮できていない人材を、より能力を発揮し、より高い付加価値を生み出すことのできる職場へ、シフトさせる必要がある。厚生労働省は、それを実現できるような転職、再就職に的を絞った施策をガイドラインとして推進するべきだ。