増える「デジタルシニア」
インターネットやスマートフォン(スマホ)を駆使する65歳以上のシニア層が増えている。ネット通販の利用率は10年で3倍に膨らみ、メールやホームページ閲覧から用途が拡大。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及も順調だ。欧米はシニアのネット利用ではるか先を行っており、AI(人工知能)活用などで高齢者のネット潜在力を引き出せるかがデジタル経済の行方にも影響しそうだ。
(中略)
労働力の観点からも高齢者のネット・スマホ利用は見逃せない。ネットを使い職場以外で働く「テレワーク」の環境も整い、高齢者も自宅からネットを通じて働けるようになり始めている。年金など社会保障への不安が強まる中で少しでも働きたいというシニアには追い風だ。デジタル経済でシニアの活力をフルに生かすため企業や行政にできることは多い。
(日本経済新聞 10月22日)
欧米諸国では、コンピューターが登場する遙か以前からタイプライターが使われてきた。キーボードに慣れている人が多い欧米で、スマホやパソコンの利用率が高いのは当然だ。
一方、日本初ワープロが東芝から発売されたのは1978年だった。当初、数百万円だった日本語ワープロは、80年代半ばになると十数万円にまで価格が低下し、普及期を迎える。1985年に35歳だった人は、今年67歳。キーボードで日本語入力することに慣れた最初の世代が、今や高齢者の域に達した。今後は、日本でもデジタルデバイドとは無縁の高齢者が増加していくだろう。
そして、このデジタルシニア達は、若者同様、ネットで受注してネットで納品する仕事も引き受けるようになる。既に、翻訳やコンサルティングのようにタスクと必要なスキルが明確な分野では、ネットを利用した高齢者の活躍は珍しくない。
さらに、AIによる音声認識などが進歩すれば、キー入力に不慣れな高齢者にも活躍の場が広がる。80年代から培ってきたデジタルリテラシーと21世紀のAIによって、日本の高齢者の新たなワークスタイルが生まれようとしている。