シニアの就職支援、自治体後押し

介護や子育て、流通といった人手不足が深刻な分野や中小企業で高齢者のマンパワーを活用しようと、首都圏の自治体が就職支援に乗り出している。従来、高齢者雇用は生きがい作りといった側面も強かったが、本格的な就労を仲介することで企業の人手不足解消につなげる。専門性や体力が劣る場合でも補助作業を担うことで、現場全体の労働負荷の軽減を目指す。
 東京都文京区は10月から、元気なシニアに介護の担い手になってもらう「介護施設お助け隊」を始める。週1回程度、施設で入所者の食事を介助したり、館内を清掃したりする。60歳以上の15人が6月から研修を受けてきた。
(中略)
首都圏の有効求人倍率は高止まりが続く。特に、介護や流通関係は全職業平均に比べて高く、人材の奪い合いとなっている。7月の都内(パート常用)を例にとると、介護サービスは約9倍、商品販売も4倍近くに達している。年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられていることもあり、自治体も両者の仲介に力を入れ始めた。
(日本経済新聞 9月8日)

自治体がシニアの就職支援に組織的に取り組むことは、もはや珍しいことではなくなった。先進的な取り組みとしてニュースで取り上げられてきた一部の自治体の施策は、今や全国の自治体に拡大している。特に、人手不足が深刻な首都圏では、自治体もシニアの就職支援に積極的だ。今後、これらの自治体の事例が全国の自治体に共有され、さらなる拡大が加速していくだろう。

文京区の「介護お助け隊」は、区が人件費を補助するなど、財政力のある東京都ならではの施策であり、そのまま他の自治体で同じことを実施するのは困難な面もある。しかし、具体的な業務とシニア人材とのより良いマッチングやシニア人材の能力開発など、共有すべきノウハウは多い。対象業種の重点を介護や流通に置いているだけに、この分野でのノウハウの深化と具体化が図れ、それを共有する価値も高まる。なにより、介護と流通の人手不足は、首都圏だけでなく全国的な問題だ。首都圏の自治体の取り組みが全国に波及することは、この問題の対策のひとつとなるだろう。