公務員定年を65歳に、政府検討

政府は現在60歳の国家公務員と地方公務員の定年を65歳に延長する検討に入った。2019年度から段階的に引き上げる案を軸に調整する。公務員の総人件費を抑制するための総合策もあわせてつくる。少子高齢化が加速するなか、労働人口を確保する。政府が率先して取り組むことで、企業への波及効果も狙う。
(中略)
65歳への引き上げを軸とするのは、公務員の年金制度にあわせるためだ。支給開始の年齢は13年度から25年度にかけて65歳に段階的に引き上げる予定だ。定年が60歳のままだと定年後に年金を受けとることができない人が多く出る恐れがある。
引き上げにあたっては、国家公務員法で62歳と定める省庁の事務方トップの事務次官の定年延長も議論する。事務次官の年齢があがると局長や課長などの年次で構成する霞が関の官庁の人事制度全体も修正が避けられなくなる。
 (日本経済新聞 9月1日)

かつて公務員は、定年前に退職し、役所が斡旋する民間企業へ転職することが一般的だった。特に、国家公務員の官僚は、局長になる年次に局長になれなかった者は辞め、局長の中の誰かが事務次官になると、新事務次官の同期の局長は全員辞めて天下りをすることで、後進に道を譲るのが慣例であった。しかし、関連業界への天下りが禁止された現在では、早期退職を促すのは難しい。そうかといって高齢者を再雇用したのでは、先輩が後輩の部下になることになり、官僚社会に根強く残る年功序列の思想に反する。したがって、60歳以上の職員の雇用を確保して年金の支給開始年齢の引き上げと整合性を保つには、官僚組織にとって定年延長が最も抵抗が少ない選択肢だ。

しかし、単純に、事務次官や局長、課長などの役職に就く年齢を上げたのでは、管理職の若返りはできない。若い人材に活躍の場を与えるには、階層的な組織構造に合わせたラインの管理職とは別の組織や専門職を増やす必要があるだろう。その点では、「政府が率先して取り組むことで、企業への波及効果も狙う。」というより、むしろ、民間企業の組織のあり方を参考にするべきだ。