85歳で現役販売員:日本で薄れる定年

化粧品大手ポーラの店舗でしわ改善クリームや美容品を販売する飯田芳子さんは、85歳になった今も流行の仕掛け人だ。週に6日は出勤し、女性販売員のチームを統括する。全員が一般的な定年年齢を超えている同販売チームの売り上げは、地域内の多くの店舗を上回る。「健康であれば(この仕事を)やっていたい」と飯田さんは話す。
(中略)
経済協力開発機構(OECD)の2016年の調査によれば、65歳以上で仕事に付いている人の割合は日本が約23%と、先進7カ国(G7)で最も高い。
しかし、こうした高齢労働者の多くはコンビニエンスストアの店員など最低賃金に近い給与条件で働いている。
(ウォールストリート・ジャーナル 7月5日)

高齢者の就労率が高い日本でも、85歳の販売員の例は多くない。しかし、80代の女性も化粧品の消費者であることを思えば、消費者と同世代の販売員がいることは、むしろ当然のことだ。
このウォールストリート・ジャーナルの記事では、ポーラ化粧品の他に、ヤクルトや大和証券も高齢の営業職を採用している例として挙げられている。いずれも、顧客との長期的な関係が重要な業界の企業だ。これらの業界の販売担当者には、強いカスタマー・リレーションを活用した販売を行う点で、コンビニの店員より高い能力を求められる。したがって、給与水準も高い。
一方、高齢の消費者とのカスタマー・リレーションの維持・強化は、高齢の販売員の得意とするところでもある。こうした付加価値の高い仕事に就くシニアが増えれば、就労率だけでなく、所得の面でもG7の中で上位に位置するようになるだろう。