高齢者の就労、脳活動の活性化に
経済産業省は2017年3月3日に開催した「ヘルスケア産業の最前線2017」の第1部として、「平成28年度健康寿命延伸産業創出推進事業成果報告会」を開催した。同事業は2014年度からの3カ年事業で、「健康寿命延伸産業」の創出および育成によって健康増進や医療費の適正化を目指すもの。
(中略)
成果報告会で登壇した1社が福祉工房だ。2016年度の委託事業として「社会参加促進を通じた生涯現役社会の構築を行う事業」のテーマで採択された「高齢者の『健康づくり』と『就労マッチング』による生涯現役社会の実現」について報告した。福祉工房の事業は、高齢者の健康づくりと就労マッチングの実現を目標としたもの。介護業界の人手不足を元気な高齢者の労働力で補う動きが出ている一方で、就労への仕組みが十分整備されているとはいえない現状に目を付けた。舞台となったのは、東北福祉大学に設置し、福祉工房が企画と運営を行う「仙台元気塾」。
事業モデルはこうだ。まず、高齢者は健康サービスを受け、自分の健康と向き合う。次に教育サービスを受け、雇用に必要な知識やスキルを学ぶ。そして、社会参画支援サービスとして、具体的な指導イメージと実践的なノウハウを獲得した後、就労マッチングを行う。
(日経デジタルヘルス 3月13日)
健康増進が高齢者の就労に役立つことは論を待たない。その逆もまたしかりだ。福祉工房が運営する仙台元気塾は、この両者を促進する高齢者向けサービスをワンストップで提供し、サービス間でシナジー効果を上げている。
仙台元気塾の調査によれば、就労を行うことで、左脳と右脳の思考と理解、右脳の感情と聴覚、左脳の記憶と視覚などの脳機能が活性化することも確認された。脳が活性化されれば、雇用に必要な知識やノウハウの学習意欲も増し、職業選択の幅も広がる。よりやりがいのある仕事に就けば、さらに健康増進に役立つ。こうした好循環を生み出し、社会的に継続するためには、仙台元気塾のような取り組みを実証実験にとどめるのではなく、一般的な機能として社会に取り込まなければならない。