タクシードライバー高齢化 雇用維持へ安全管理

法人タクシーの運転手に占める65歳以上の割合が昨年、28.4%と過去最高だったことが厚生労働省の調査で分かった。これまで最高だった2015年の27.4%を1.0ポイント上回り、高齢化が一層鮮明になった。
(中略)
厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」の最新データ(昨年)によると、法人タクシーの運転手に占める65歳以上の割合は過去最高の28.4%。年代別運転手数で2年連続トップになった。
「60~64歳」の24.8%、「55~59歳」の18.1%が続き、平均年齢は58.9歳。過去最高だった2015年の59.0歳よりわずかに低下したものの、全産業平均の43.0歳(昨年)に比べ依然として高齢化が際立つ。
国内のタクシー台数は法人が19万1363台、個人が3万6962台(15年3月末、国土交通省調べ)と、個人は全体の2割未満。高齢化は法人より深刻で、全国個人タクシー協会によると、65歳以上が52.6%で平均年齢は63.6歳(15年3月末)。
国交省は個人タクシーの高齢化に歯止めをかけようと、通達で02年2月以降に参入した運転手は75歳以降、事業許可を更新できない事実上の定年制を設けた。しかし、それ以前から働く運転手には適用されず75歳以上は全体の7.1%に当たる約2400人(同)。
(毎日新聞 3月9日)

宅配需要の増加に悲鳴を上げているトラック業界同様、タクシー業界でもドライバー不足は深刻だ。平均年収が300万円程度と他の業界に比べて低いこともあり、若年層の確保はトラック以上に難しい。人手不足を補っているのは、高齢者や女性だ。そういう意味では、タクシー業界は一億総活躍社会を先取りしているとも言える。

ただ、先取りしているが故に、課題も他の業界に先駆けて顕在化してきた。そのひとつは、安全性の確保だ。高齢のドライバーの事故率は比較的高い。人身事故のような重大な事故は少ないが、軽微な物損事故は増える傾向にある。

75歳以上に個人タクシーの事業更新を許可しないという国交省の施策も、この問題に対するひとつの解だが、よりよい解は、自動運転などの技術を応用して高齢者でも事故を起こさない車を開発することだろう。行政、自動車メーカー、タクシー業界が協力して、この課題にチャレンジして欲しい。その成果は、他の業界における高齢者の雇用拡大にも貢献するに違いない。