高齢者雇用、道半ば 採用企業増加するもミスマッチも
茨城労働局は本年度、従業員31人以上の県内企業2557社の雇用状況を調査。調査結果によると、70歳以上も働ける企業は530社。前年より1・4ポイント増加し、全体の20・7%を占めた。定年制を廃止した企業は同0・2ポイント増の2・5%。いずれも、従業員300人未満の中小企業の取り組みが中心だ。
就労を望む高齢者に門戸を開く企業がある半面、希望職種と異なるミスマッチも生じている。 日立市内で暮らす男性(69)は、大手電機メーカーを60歳で定年退職。その後電子部品関連の小規模企業で65歳まで働いたが、現在は年金暮らし。自身の経験が生かせる職種を探しているが、募集企業は未経験の職種ばかり。男性は「この年になって、初めての仕事は厳しい」と諦め顔だ。同労働局によると、高齢者を採用する企業は、人手不足にある介護や警備など一部業種に集中する傾向があり、高齢者が未経験職種への応募に二の足を踏むケースも少なくないという。
ただ、人口減少の進展に伴い、働く意欲がある高齢者を雇用する企業は今後増加するとみられる。 同労働局の西井裕樹局長は、中長期的な人口減少を踏まえ、「(65歳以上の)高齢者も社会に出て行くことになる。その受け皿としての短時間勤務は増加していくのではないか」と予測する。
(茨城新聞 1月5日)
70歳以上でも働ける企業は、次第に増えてきているが、65歳以上の高齢者を新規に採用する業界は、まだ限られていることも事実だ。アベノミクスの成果として強調されている雇用の強さも、介護や建設など人手不足に悩む一部業界の求人増に支えられている面がある。高齢者に限れば、求人が多い業界の偏りはさらに大きい。
より幅広い業界で高齢者の新規雇用を促すには、労働局が指摘するように、短時間勤務などの勤務形態の多様化が重要だ。特に、ホワイトカラーの業務では、報酬を勤務時間だけでなく、成果評価で決定する仕組みも導入すれば、勤務形態の多様性は広がる。さらに、インターネットを活用した在宅勤務も取り入れれば、勤務形態の自由度はより大きくなる。高齢者の経験と能力を活かすには、企業も努力が必要だ。