雇用保険改正、シニアの味方に 失業給付手厚く
働く高齢者に大きな影響がある雇用保険の改正が年明け1月に迫ってきた。65歳以降に転職した人も雇用保険の対象になるほか、加入者は失業給付の支給回数制限がなくなり、介護休業給付金も利用できる。
(中略)
現在は週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがある人は雇用保険に入るのが原則だが、65歳以上で新規雇用された人は加入できない。65歳前から雇用保険に入って同じ会社で働く人は加入し続けられるが、65歳未満に比べるといくつかの制約があった。来年1月以降は加入時の年齢による制限はなくなり、労働時間などの条件を満たした人はだれでも雇用保険へ加入できる。厚労省の試算では約64万人が新規加入する見込みだ。この改正で、まず失業給付が大きく変わる。65歳以上の加入者が失業すると、賃金の50~80%の30~50日分を高年齢求職者給付金としてもらえる。現在は一回だけ受け取れるが、来年から回数制限はなくなる。
さらに失業給付の対象になるための期間条件が短くなる。64歳までは基本的に「離職前2年間に被保険者期間が12カ月以上ある」ことが必要だが、65歳以降は「同1年間に被保険者期間6カ月以上」と2分の1に縮む。
(日本経済新聞 12月14日)
65歳以上の雇用の拡大を国の政策として推進している以上、65歳以上の雇用保険について制限を無くすのは当然だ。さらに、今回の改正では、制限を無くすだけでなく、失業給付の対象となるための期間条件に関しては、65歳以上が有利になるよう制度設計されている。短い被保険期間で辞める可能性が高い高齢者に配慮した制度だ。この雇用保険改正は、高齢者の就労意欲の向上に寄与するだろう。
ただ、企業にとっては、雇用保険の負担が増加するというマイナスもある。しかし、人手不足に悩み、高齢者の雇用に積極的な企業では、高齢者が勤労意欲を高めて、より多くの高齢者が労働市場に参入してくるメリットの方が、雇用保険負担増加によるデメリットよりも大きい。日本経済全体としては、今回の改正は、成長促進の方に働くだろう。