起業家、3人に1人はシニア

高齢者による「シニア起業」が増え続けている。中小企業白書によると、2012年の調査で過去1年間に起業した22万3000人のうち、60歳以上の高齢者は32.4%を占め、全世代で最多だった。比率は1982年の8.1%の4倍に、実数も2万人から7.2万人へと3.6倍に拡大し、その後も増えているもようだ。起業家が82年から1割減るなかで健闘が目立つ。

多額の収益は得られなくても、定年前の仕事の経験などを生かして「社会とつながっていたい」と考える人が増えている。政府による年金の受給開始年齢の引き上げなども見込まれるなか、シニアの起業熱は今後も高まりそうだ。
(日本経済新聞 10月17日)

人口に占める60歳以上の割合が増加しているため、起業家における60歳以上の比率がある程度拡大するのは自然だが、30年で3.6倍というのは、かなり大きな伸びだ。起業することが、社会とつながる手段のひとつとして、存在感を増していることがうかがえる。

54歳以下の起業家の開業動機では、「収入を増やしたかった」が3位以内に入っているが、55歳以上では、入っていない。その代わり、54歳以下では3位以内に入っていない「社会の役に立つ仕事がしたかった」が2位となった。収入よりも社会とのつながりを重視する高齢者の姿勢がこのあたりに表れている。

総合起業活動指数による国際比較では、2014年の調査で、日本は、世界70か国中69位、米国やカナダの3分の1程度と依然として極端に低い。しかし、シニアの起業熱の高まりは、しだいに、日本社会全体に波及し、起業意欲の拡大を促進していく可能性はある。IPOで巨万の富を手にすることを目指さす起業でなくても、小粒だが社会に着実に貢献できる起業の種は数多く存在している。シニアがその種を見つけ、育てて花を咲かせていくことに期待したい。