定年後の再雇用巡りトヨタ敗訴
定年後の再雇用を巡り、不当な業務内容を提示されたとして、元トヨタ自動車社員の男性(63)(愛知県豊田市)が同社に200万円の慰謝料などを求めた訴訟の控訴審の判決が28日、名古屋高裁(藤山雅行裁判長)であり、請求を棄却した1審・名古屋地裁岡崎支部の判決を変更し、同社に約127万円の支払いを命じた。
判決によると、事務職として働いていた男性は、2013年、60歳の定年を迎えるのを機に、雇用期間が最長5年の「スキルドパートナー」職としての再雇用を希望した。しかし、同社は、能力が同職種として再雇用される基準に達していないとして、原則1年雇用のパートタイム職を提示。その業務内容が社内の清掃だったため、男性は拒否し、再雇用されなかった。
判決理由で藤山裁判長は、「再雇用の業務内容がそれまでと全く違い、社会通念上、労働者にとって到底受け入れがたいものだ」と指摘。継続雇用などの措置を講ずるよう義務づけた改正高年齢者雇用安定法の趣旨に明らかに反しており、違法だとした。
(読売新聞 9月29日)
平成24年に改正された高年齢者雇用安定法によって、企業は、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制度の廃止のいずれかの措置を講じなければならなくなった。定年の引き上げや廃止に踏み切る企業もある一方、現行の人事制度を大きく変える必要のない継続雇用制度を選択する企業は多い。
一般には、継続雇用制度の設計は企業の裁量に委ねられている。しかし、今回の判決で、名古屋高裁は、事務職の従業員に清掃業務を提示したことは、企業に与えられている一定の裁量の範囲を超えており、違法だと判断した。
違法かどうかは、社会通念というあいまいな基準に照らし合わせて判断されるため、その線引きは微妙だ。この裁判も一審の名古屋地裁ではトヨタが勝訴しており、一審と二審で異なる判決が下されている。
最高裁の判断はまだ示されていないものの、今後、企業としては、違法と判断されるリスクも念頭に置き、社会通念を企業側に厳しく解釈した上で、継続雇用制度の設計に取り組む必要がある。