市町村に人材バンク 総務省、住民の技能登録

総務省は市町村ごとに働く人の基本情報を集めた「地域人材バンク」づくりに乗り出す。登録を希望する住民の技能や職歴などを含んだデータベースを構築し、人手が足りない企業への出向や転職、再就職を後押しする。今年度内にまず5つの地方自治体でスタートさせる。働き手の能力を最大限引き出し、地元企業の人手不足を解消することで、地方創生につなげる。

総務省は2016年度補正予算案に必要経費を盛り込んだ。希望する市町村の中から人口規模や産業構造など特徴の異なる5自治体を年内にも選定する。自治体には地域全体の人事部のような立場で地域の人材育成・活用戦略をつくってもらう。この取り組みの成果をまとめ、全国の市町村に広げていく。
各地では厚生労働省が所管する公共職業安定所(ハローワーク)が企業の求人や職を探す人の情報を持っているが、失業して職探しを始めた人の情報が中心だ。現在働いている人や休職中の人の情報が乏しいという課題があった。市町村でも厚労相に通知すれば無料の職業紹介ができる。

地域人材バンクには、希望する住民の職歴や資格、特殊技能といった情報を個人ごとに登録してもらう。企業が個人の同意を得て登録することも可能になる見通し。現在働いている人とともに、育児などで一時的に離職している人や、定年退職した高齢者など幅広い人材に登録を呼びかける。
(日本経済新聞 9月8日)

仕事を求めている人のすべてが、今すぐにでも就職先を決めたいと思っているわけでもない。すぐに働きたい人はハローワークへ行くが、一方では、条件が合えば働いてもよいが働かなくても困らないと思っている人は、行動を起こさず、労働市場に参加しないこともある。退職した高齢者や育児で離職したまま働いていない専業主婦には、そうした人も多い。

今回の地域人材バンクの取り組みは、こうした人材を労働市場に呼び戻し、企業の求人ニーズとマッチングさせて社会参加を促すという点で意義がある。地域人材バンクが最初のターゲットとしている保育や介護などは、社会的なニーズが大きいにも関わらず、慢性的な人材不足に陥っている分野だ。住民の福祉の向上という観点からも自治体が積極的に関与すべきだろう。地域人材バンクには、民間の人材紹介業とも連携した地域の人材流通のハブとしての機能を果たしてもらいたい。