東電、70歳まで雇用延長へ
東京電力は、電力小売りの全面自由化など激変する経営環境を踏まえ、高齢世代社員の活躍を目的に、雇用延長制度で65歳まで働く社員の処遇を改善する。あわせて高度な専門能力を持つ社員については、70歳まで雇用を延長する制度を導入する。70歳までの雇用延長は電力業界で初めて。2016年度から導入し、同年に57歳を迎える社員から適用する。「ベテラン社員に一層活躍してもらうことで、電力自由化競争に勝ち抜いていく」(吉田恵一・経営企画ユニット組織・労務人事室長)のが狙いだ。
これまで独占状態だった家庭向け電力市場が全面自由化され、多様な顧客に選んでもらう必要が出てくる。また、業務効率化や時間外削減を一層進める上でも、ダイバーシティ(人材の多様性)が重要な要素を持つとして、女性の活躍推進をはじめ様々な取り組みを進めている。
現在、東電の定年は60歳。57歳で雇用切り替えとなり、いったん退職し65歳まで再雇用される「A社員」となるか、グループ会社などに転籍するか、あるいは雇用延長をせずに60歳で定年となる社員がいる。(電氣新聞 1月25日)
多くのグループ企業を抱え、取引先も数多い電力会社は、今まで、定年後の転職先に事欠くことはなかった。
しかし、原発の再稼働が進まず、家庭向け電力の自由化の波にさらされて経営環境が厳しさを増す中、各社ともコアの事業に経営資源を集中させ、経営効率を向上させようとしている。転職先を斡旋して早い退職を促すよりも、定年を延長して自社で長く活躍してもらうよう人事制度を変えるのは自然の流れだ。
特に、原発事故後に政府管理下に入った東京電力は、電力以外の多くの事業を整理し、グループ企業も減らした。シニアの活躍の場を社外だけではなく、社内に求める必要があった。
ただ、必要に迫られた定年延長であっても、これを契機に、社内でのシニアの能力活用が進めば、さらにシニアへの需要が高まることも考えられる。そうなれば、既存の社員の定年延長だけでは供給が追い付かず、新規にシニアを採用することになるかもしれない。電力会社がダイバーシティを目指すなら、そこまで踏み込んで欲しいものだ。