シニアの介護事業所就労、回想療法にも効果
奈良県生駒市は27日、高齢者の介護事業所でのトライアル就労事業を県内で初めて実施したと発表した。専門職でない職種に60歳以上のシニア10人が3カ月就労し、介護分野で8人の継続雇用につながった。受け入れた事業所からは、利用者の話し相手になることで回想療法にもなるとの意見も寄せられた。今回の事業は高齢者の社会支援参加や健康づくりと、介護業界の人材不足解消を目的に、生駒市が奈良県福祉人材センターと共同で行ったもの。参加者する高齢者は配膳・下膳や清掃のほか、話し相手になるなど介護資格がなくてもできる業務に就く3カ月間のトライアル就労を行い、マッチングがうまくいけば期間終了後も働き続けられる仕組みとなっていた。
(CBnews 2月27日)
大学生向けに企業がインターンシップの機会を提供しているように、就労を希望する高齢者に対して、トライアル就労を実施する介護施設が増えている。トライアル就労によって事前に現場の業務を体験すれば、労使双方の理解が深まり、ミスマッチを減らすことにつながる。トライアル就労は、求職者である高齢者にとって、仕事を体験するトライアルであると同時に、求人している事業所にとっては、どのような業務が高齢者に向いていて、どのような効果が期待できるかを確認するトライアルでもある。
生駒市のケースでは、認知症に対する回想療法の効果が確認できた。回想療法は、過去の思い出や経験を振り返ることで、精神的な健康を促進し、認知機能の改善を促す治療法だ。一般的には、昔の写真や音楽、日用品など五感で感じるものをきっかけとして過去を振り返ってもらうことが多い。しかし、高齢者が高齢者に回想療法を施す場合には、生きてきた時代を共有しているため、昔の物語を共有することができる。これは、若い職員にはできないことだ。生駒市のトライアルは、高齢者の就労につながっただけでなく、高齢者ならではの付加価値を見出した点で、成功だった。