年金額25年度1.9%増、物価より伸び抑制

厚生労働省は24日、2025年度の公的年金の支給額を1.9%引き上げると発表した。物価や賃金の伸びを反映し、3年連続で増える。年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」も3年連続で発動するため、物価を考慮した実質ベースでは目減りする。物価の伸びより給付が抑えられるため、年金財政の改善は進む。将来年金を受け取る世代にとってはメリットとなる。
(日本経済新聞 1月25日)

公的年金の支給額が物価を考慮した実質ベースで目減りするのはマクロ経済スライドのためだけではない。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、名目賃金に物価の変動を反映させた実質賃金は前年比0.2%減と3年連続のマイナスだ。マクロ経済スライドは名目賃金の変動率から現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出したスライド調整率を差し引くもので、今回のスライド調整率は0.4%となった。実質賃金が0.2%減少する中、そこからさらに0.4%引き下げるのでは、物価上昇との乖離が大きくなり、高齢者の消費は抑制されることになるだろう。年金財政の改善が進むので、将来年金を受け取る世代にとってはメリットだという見方もあるが、マクロ経済スライドを続けていけば、将来年金を受け取る世代の年金受給額は今よりもさらに目減りした額になるのも事実だ。

少子高齢化の下では、年金財政の改善は難しい。しかし、金利を物価上昇率以上に上げ、実質金利をプラスにするのは、一つの手段だ。金利が上がれば、物価上昇は抑制される一方、年金積立金の運用益は増加する。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する年金積立金の運用益は年率4.4%程度だが、米国の10年物国債の利回りは4.5%前後だ。もし、日本の国債の金利が米国と同程度なら、GPIFは日本国債を買うだけで、現在と同じリターンをリスクなしで得ることができる。それに加えてリスク資産を持てば、今以上の運用益を上げることができるだろう。

また同時に、高齢者が長く働ける社会の構築も重要だ。年金制度の持続性を考えるなら、平均寿命より10年若い歳までは働くことのできる社会でなければならない。