ITと知見生かし100歳現役、変わる働くシニア像
2050年は働けるまで働く「生涯現役」が常識となる。医療技術の進展により、健康で長生きする高齢者が増える。人工知能(AI)活用で、自分の能力が生かせる職場が摩擦なく見つかる。定年による労働市場からの一斉のリタイアは過去のものとなり、誰もが能力と意欲に応じて、はつらつと社会に貢献する未来が訪れる。
(日本経済新聞 1月7日)
少子高齢化が今のペースで続けば、恐らく、2050年を待たずに生涯現役は日本の常識になるだろう。生涯現役を実現するための医療技術やAIの開発は喫緊の課題だ。医療では、個々の疾病に対する治療法の進歩だけでなく、老衰を軽減するための老いへの総合的な対策の確立も重要になる。AIの活用では、「自分の能力が生かせる職場が摩擦なく見つかる」マッチングサービスも有益だが、そもそも、自分の能力を生かせる職場が少なければ、マッチングの精度を上げても見つけることは難しい。加齢によって能力が限定されても働き続けられるよう、その能力を補完することにもAIを活用して、高齢者が就労可能な職場を増やすべきだ。
ただ、「定年による労働市場からの一斉のリタイアは過去のもの」となることは、必ずしも、「誰もが能力と意欲に応じて、はつらつと社会に貢献する未来が訪れる」ことの要因にはならないことに留意が必要だ。実際、定年がない米国において、65歳以上で働く人の割合は19%と日本の26%に比べて低い。定年をなくすだけでなく、65歳を過ぎても働くことのできる社会環境を整備することが重要だ。