夫婦で月38万円、老後の年金十分?

2024年は公的年金の財政状況をチェックする5年に1度の財政検証の年にあたる。厚生労働省はこのなかで将来の給付水準の見通しを示した。現在30歳の夫婦が65歳になった時にもらえる年金額は2人あわせて月38万円。
(中略)
夫が会社員で妻が専業主婦の「モデル世帯」だと、受け取る年金額は月33万円だ。老後の資金繰りは共働き世帯よりも苦しくなる。もっとも月33万円を年間で換算すると400万円程度で、現在の20代後半の男性の平均年収程度に相当する。ぜいたくはできないが、一定の水準は確保したとも言える。 
(日本経済新聞 9月23日)

公的年金の財政検証の結果が発表されて以来、様々なメディアで解説が流されている。前回に比べると改善していることを好意的に捉える報道が多いが、財政状況が厳しいという現実には変わりはない。その厳しさを客観的に把握するには、将来の日本経済の状況を前提に公的年金の給付水準を評価する必要がある。
この記事が指摘するように、モデル世帯の30年後の年金額は月33万円だ。しかし、これを「現在の20代後半の男性の平均年収」と比較して同程度と評価するのにはあまり意味がない。政府が目標としているように、物価上昇を超える年5%の賃上げが継続するなら、30年後の20代後半の男性の平均年収は現在よりもかなり多くなる。一方、制度上、年金は物価ほど上がらないので、年金と賃金の格差は拡大する。30年後の月33万円の年金額が30年後の20代後半の男性の平均年収程度に相当するとは思えない。将来の年金水準を評価する指標としては、絶対的な支給額ではなく、現役世代の賃金との相対的な比率を使うべきだ。