60代後半の就業率「57%」目標に、高齢社会対策大綱を閣議決定

政府は13日午前、中長期的な高齢者施策の指針となる新たな「高齢社会対策大綱」を閣議決定した。75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担について「3割負担」となる対象者の見直しを検討すると明記し、高齢者も能力に応じて「支える側」となれる社会の実現を目指す方針を打ち出した。
(中略)
大綱では、65~69歳の就業率(2023年、52%)を29年までに57%まで引き上げるなどの数値目標も掲げた。具体的には、リスキリングによる能力向上支援を推進するほか、65歳以上への定年延長や、66歳以上の継続雇用制度の導入を行う企業を支援する考えを盛り込んだ。
(読売新聞 9月13日)

高額所得者を3割負担とするのは、「高齢者も能力に応じて支える側になれる」のではなく、「高齢者も能力に応じて支える側にさせる」制度変更だが、現役世代の負担を抑制するには、取れるところから取るというのもひとつの選択肢だ。ただ、高額所得者は、既に所得に対して累進課税によって高い税率の所得税を払っており、それに加えて医療費の支出においてもより高額の支払いを求められることが公平なのか、そのバランスも考える必要がある。最も重要な課題が後期高齢者全体の医療費削減にあるなら、医師会の反対はあるとしても、窓口負担を所得に関わらず一律3割負担とし、格差の縮小は所得税に任せるというのも解のひとつだ。
「65歳以上への定年延長や、66歳以上の継続雇用制度の導入を行う企業を支援する」ことは、高齢者の生産性が低くても行政が補助金等で補完することによって企業が雇用を継続できるようにする政策だ。この政策は、高齢者の生産性の低い企業を温存させることを促進し、国民経済全体の生産性向上を阻害する。むしろ、66歳以上の新規採用を支援して高齢者の労働力の流動化を図り、高齢者がより生産性の高い企業に移ることを促進すべきだ。