iDeCoで働く世代の資産形成推進

政府の新しい資本主義実現会議は7日、実行計画改定版の原案をまとめた。私的年金の個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)に関して「拠出限度額の引き上げ」の検討を明記するなど、働く世代の資産形成を後押しする考えを示した。投資への動きを活発にする政策の新たな柱に位置づけ、所得向上を狙う。
(日本経済新聞 6月7日)

70歳まで働くことを前提とする社会へ向かって行く中、イデコの加入可能年齢の上限引き上げは自然な流れだが、それだけにとどまらず、拠出限度額の引き上げも行われることになりそうだ。既に非課税保有限度額が引き上げられているNISAとバランスを取る上でも相応の規模の拠出限度額引き上げになるだろう。
NISAもイデコも運用益が非課税になる点は同じだが、イデコは積み立てるときと受け取るときに税優遇がある。60歳まで引き出せないという制約はあるものの、老後資金を貯めることが目的なら、イデコが有利だ。ただ、イデコは、個別株式に投資できず、定期預金や保険を選択できるものの金利が低いため、結局、投資信託で運用することになる。投資信託の商品選択では、利回りの高さから、国内の株式や債券よりも海外の金融資産へ投資するファンドが選択される割合が大きい。NISAでは、全世界株式や米国のS&P500に投資する投資信託に資金が集まる一方で、国内の高配当株に対しても一定の資金が向かっている。それに対して、個別株に投資できないイデコは、日本から海外への資本移動を加速させ、金融市場に長期的な円安圧力を加え続ける可能性がある。この点については、日本のマクロ経済政策の観点から留意が必要だ。