シニア社員活用の動き拡大、役職定年廃止や定年延長

少子高齢化が進み、2070(令和52)年には15~64歳の生産年齢人口が約52%まで低下する見込みとなる中、大企業を中心にシニア世代を活用する動きが広がっている。一定の年齢に到達すると管理職などの役職から外す「役職定年制度」の廃止や、定年退職の年齢引き上げが目立つ。
(中略)
大和ハウス工業は、社員が60歳になると管理職から外して給与を減額する役職定年制度を令和4年4月に廃止した。現在は約250人が管理職を継続している。「人手不足を補うことが第一。企業の存続は人にかかっており、先輩社員に応援してもらいたい」。制度廃止について同社の芳井敬一社長はこう語る。経験や知識、高度な専門資格を持つシニア社員の流出を抑止し、転職市場のキャリア採用で競争力を強化するなどの狙いがあるという。
(産経新聞 8月18日)

近年、「大企業を中心にシニア世代を活用する動きが広がっている」のは事実だが、これは、もともとシニア世代を活用していた中小企業に比べて、大企業では早期に第一線から引退するシニアが多かったという過去の事実の裏返しでもある。今まで、大企業は中小企業に比べて、年功序列の度合いが大きく、50代の給与水準が高かった。加えて、中小企業よりも新卒採用で有利な立場にあり、若年層の人材獲得が比較的容易だった。このような状況下では、50代のシニアには、早めに現役を退いて後進に道を譲ってもらい、人件費を抑制したいと思うのは、企業として合理的な判断だ。
しかし、今や、大企業の人事制度からも年功序列の色彩が薄れ、少子化によって大企業といえども新卒採用に苦労する時代になった。さらに、建築業界では、建築士や現場監督など有資格者を中心に人材争奪戦が繰り広げられている。こうなると、シニア世代の重要性は高くなる。大和ハウス工業に限らず、シニア世代に長く現役を続けてもらうための人事制度改革は、今後も広がっていくだろう。