財形貯蓄70歳未満まで加入可能に
厚生労働省は利子が非課税になる財形貯蓄制度に加入できる年齢を、現在の55歳未満から70歳未満に引き上げる検討に入った。働く高齢者が増えていることを受けて、制度を見直す必要があると判断した。財形貯蓄は従業員が金融機関と契約を結んで、給与天引きで積み立てる仕組み。60歳以降に年金として受け取る財形年金貯蓄と、住宅購入・リフォーム費用にあてる財形住宅貯蓄は、あわせて元利合計550万円までの利子が非課税となる。ただ加入年齢が55歳未満という制限があった。
(日本経済新聞 6月3日)
70歳までの雇用機会の提供を企業の努力義務としている以上、財形貯蓄制度の加入年齢も70歳未満に引き上げるのは当然ではある。むしろ、現在でも55歳未満になっていることの方に違和感を覚える人も多いだろう。非課税対象の拡大は、財務省との調整が必要となり、厚生労働省だけでは決められないとしても、国の政策の間で整合性が取れない状況はつくるべきでない。
このような不整合が生まれたのは、超低金利の下で利子がほとんど付かない状態が続き、財形貯蓄そのものの需要が小さかったことも影響しているのかもしれない。あるいは、貯蓄から投資への転換を促す意図があったのかもしれない。ただ、日銀も異次元の金融緩和から脱却し、マイナス金利政策を解除して金融政策の正常化を目指している。欧米に比べると周回遅れではあるが、日本もようやく金利のある世界に入ってきた。今後は、貯蓄にも一定の需要が見込まれる。なにより、多くが海外へ流れる投資に比べて、貯蓄は国内に資本が滞留する割合が大きい。財形貯蓄の加入年齢の引き上げは、勤労者の資産形成を促進するとともに、恐らく、国益に適っている。