三井住友銀、年功序列を廃止、シニア層の一律減給も撤廃

三井住友銀行は2026年1月をメドに、人事制度を抜本的に変える。入社年次を給与に反映する「階層」を廃止するほか、シニア層の給与を自動的に引き下げる仕組みも撤廃する。年齢にこだわらず能力の高い人材を厚遇し、優秀な人材の獲得や引き留めにつなげる狙いだ。20代の社員でも責任の重い役割を任され、年収2000万円に到達できるようになる。デジタル分野などの専門人材は国内大手や外資の同じ職種の水準を参考に給与を決める仕組みを取り入れ、5000万円前後の年収を可能にする。
(日本経済新聞 6月18日)

年功序列型賃金からの脱却やシニア層に対する年齢による一律減給の廃止は珍しくなくなった。ただ、公務員と同様、保守的な人事制度を維持してきた銀行業界としては、三井住友銀行の新たな人事制度への移行は、エポックメーキングな出来事ではある。

これまで、三井住友銀行を始めとするメガバンクは、日本で低金利が続く中、海外事業の拡大によって利益を確保するビジネスモデルへの変換を進めてきた。メガバンクの海外法人では、現地の慣習に従って「年齢にこだわらず能力の高い人材を厚遇」している。今回の三井住友銀行の人事制度改革は、海外法人での常識を国内にも適用し、企業グループ内でグローバルに通用する制度を構築するという意味もある。

また、人材争奪戦においては、銀行のライバルは銀行だけではない時代になった。AIやデータアナリストなどのデジタル人材は、あらゆる業界で需要が急拡大している。特に、数が限定される優秀な人材の獲得には、銀行業界の常識ではなく、市場の常識に合致した処遇の提示が必要だ。三井住友銀行は、今回の人事制度改正でその実現に近づくことができる。ただし、「5000万円前後の年収」で十分かどうかは定かではない。頭取を超える年収の提示が必要な場合もあり得る。大谷翔平さんの年俸が監督の年俸より遙かに高いのと同じだ。