低年金女性は25年後も5割超、「年金給付改善」の真実
5年に1度、公的年金の将来の給付水準などを分析する「財政検証」の結果が、7月に公表された。2019年時より改善傾向にあるが、女性の5割超は25年先でも低年金というのが現実だ。
(中略)
厚労省は今回、65歳時での1人当たり平均年金額の見通しを初めて公表した。それによると、経済成長が横ばいの場合、24年度65歳の女性で年金受給月額が10万円未満の層は全体の67.3%に上る。だが、同40歳の人が65歳になる25年後も、それは53.4%に達した。男性の場合は10万円未満層が現在は20.2%で、同40歳世代も25年後は20%のまま。低年金者が多い実情は容易に変わらないのだ。
(日経ビジネス 9月6日)
専業主婦や就業していてもパートなどの非正規雇用の場合、年金額は低くなる。正社員として定年まで働いたとしても、女性は男性に比べて平均給与が低いため、年金の平均額も相対的に低い。女性に低年金者が多い理由はたくさんあって、ひとつの対策で抜本的に解決するのは困難だ。要因分析を行い、影響の大きな要因から個々に対策を講じていく他ない。
配偶者のいる女性の場合、夫との年金の合計額を一定以上に保つことで、世帯としての生活水準を維持することができる。夫が死亡したとしても、今までは遺族年金で生活を支えることができた。実際、自身の年金より、夫の遺族年金の方が多い高齢女性は少なくない。遺族年金は既婚女性の低年金対策だった。
しかし、厚生労働省は今、妻の遺族年金を夫が受け取れるようにする代わりに、夫の遺族年金の支給を5年で打ち切るように制度を変えようとしている。男性の平均寿命は女性より短いため妻の遺族年金を受け取る夫の数は多くないこと、女性の年金は男性の年金より低いことを考えれば、この制度変更で遺族年金支給額全体が減少することは確実だ。年金財政の維持が目的の制度変更かもしれないが、これによって女性の低年金問題はさらに深刻化する。生活に困窮する高齢女性を増やさないためには、遺族年金の制限の前に、女性自身の低年金問題を解決しておかなければならない。