働く高齢者、40年に1.4倍
今年の経済財政白書は日本の高齢者について「国際的にみても健康で、長く働きたいという意欲も強い」と分析した。働き手の拡大が続けば60歳以上の就業者は2040年に今の1.4倍となる2031万人に増えるとも試算した。
(中略)
白書は定年引き上げが経営指標に与える影響も検証した。その結果、人件費率は上昇傾向がみられたものの、収益率については統計的に有意な差はなかった。白書は、定年引き上げの有無が業績に与える影響は小さかったと結論づけた。その背景については「高齢者の追加的な雇用で人件費率は相対的に高まったが、生産性の改善などの企業努力により、収益への悪影響を抑えている可能性がある」と指摘した。
(日本経済新聞 8月20日)
「定年を引き上げると人件費率が上昇し、そのため、収益率が低下すると思われがちだが、定年を引き上げても収益率が低下するという統計的に有意な結果は得られなかった。したがって、収益率の低下を心配して定年引き上げを避ける必要はない。」というのが経済財政白書の主張のようだ。
たしかに、定年引き上げと収益率との間に有意な相関関係はない。しかし、相関関係と因果関係は統計的には別物だ。因果関係は、次のようになる。定年引き上げは収益率低下の要因のひとつ。にもかかわらず、定年引き上げと収益率に相関がないのは、収益率を上昇させる要因の影響があるから。そのひとつは、生産性の改善などの企業努力。
逆に言えば、生産性の改善などがなければ、定年引き上げは収益率低下をもたらす。企業や株主にとって、定年引き上げに限らず、収益率低下につながる施策を受け入れる合理的な理由はない。まずは、生産性の向上、特に、定年延長の対象である高齢者の付加価値向上が重要だ。