年金水準「経済成長なら6%減、横ばいで2割減」

厚生労働省は3日、公的年金に関する長期的な見通しを示す5年に1度の「財政検証結果」を公表した。一定の経済成長が続けば将来の給付水準低下は現在の6%減にとどまり、成長率がほぼ横ばいなら2割近く下がる結果が出た。いずれのケースも前回の2019年に比べて低下率が縮小する傾向がみられた。高齢者と女性の就労参加が進んだことや、株高による積立金の増加が寄与した。
(日本経済新聞 7月3日)

今回の財政検証の結果は、前回の2019年の検証に比べて年金の給付水準が高くなっているため、事態は改善しているという受け止め方が多い。しかし、給付水準の向上に最も寄与したのは、積極的な運用による積立金の増加だ。積極的な運用とは、ハイリスク・ハイリターンを目指す運用であり、この数年の投資結果が良好でハイリターンを得ることができたのは、世界的な金融緩和の影響で株高が続くという運に恵まれたからとも言える。逆に、世界同時不況という事態になれば、ハイリスクが顕在化し、給付水準は低下する。
金融市場の影響を抑制して、安定した公的年金制度を維持するには、就労参加者の増加や実質経済成長率の向上が必要だ。足元では、高齢者や女性、外国人のさらなる就労参加の余地はあるが、いずれ頭打ちになる。長期的には、少子化を食い止めることが重要であり、選挙目当てのバラマキではない、実効性のある少子化対策が欠かせない。また、生産性の低い企業を市場から退出させ、より生産性の高い企業への労働力の移動を促すことで、実質経済成長率を向上させる必要もある。