米高齢化で大量退職時代、3割弱が貯蓄ゼロ
米国の高齢化が一段と加速する。2024~27年は65歳の誕生日を迎える戦後生まれのベビーブーマーが毎日1万1000人程度と過去最多ペースになる見通しだ。大量退職や老後への備えが足りない低所得層への対応などの社会保障改革が課題だが、11月の大統領選挙を前にしても議論は盛り上がりを欠く。
(日本経済新聞 6月13日)
日本の団塊の世代は、1947年から1949年生まれ。これに対して、米国のベビーブーマーは1946年から1964年生まれと対象となる期間が長い。ベビーブームが長く続いたことは、米国に、高齢化に対処する時間的余裕を与えてきた。40年代後半に生まれたベビーブーマーが退職した頃、それに続く現役世代もベビーブーマーで人口が多かったため、現役世代が増加する退職者を支えることは可能だった。
高齢化問題が深刻化するのは、最期のベビーブーマーである60年代後半に生まれた人々が65歳を迎え、引退するときだ。現役世代はその後急速に減少する。日本と同様に、公的年金はより少ない現役世代が支えることになる。老後資産が十分にあれば年金を頼る必要はないが、実際には、貯蓄がない人も多い。
日本政府は、米国人は貯蓄より投資に資金をまわすため、老後資産を構築しやすいと説明し、「貯蓄から投資へ」と日本国民に呼びかけてきた。しかし、米国でも投資で蓄財できている層は限られている。むしろ、社会政策として重要なのは、貯蓄も投資もできない層の老後をどう守るのかということだ。高齢者の雇用機会拡大は、その解のひとつとなる。