高齢者の定義5歳引き上げを提案した財界トップの思惑
高齢者の定義を5歳引き上げたらどうか。そんな案が政府の経済財政諮問会議で示された。提案したのは、経団連のトップら。「誰もが活躍できる社会」を目指すためだというが、原則65歳の年金受給開始年齢を70歳にし、「70歳まで働け」と求める布石のように思える。
(中略)
高齢者は65歳以上の印象がある。それもそのはず、世界保健機関(WHO)は65歳以上を高齢者と定義。65歳で線引きする制度も多い。高年齢雇用安定法では、65歳まで雇用することが企業側に義務づけられる。年金受給の開始年齢も原則65歳だ。
(東京新聞 5月28日)
高齢者の定義を5歳引き上げるのは、「65歳で線引きする制度」を70歳での線引きに変えるための世論操作なのかもしれない。ただ、そうだとしても、寿命が延びれば、高齢者の定義の年齢が上がるのは自然なことにように思える。むしろ、国によって平均寿命が異なるのに、WHOが世界共通で65歳以上を高齢者と定義しているのなら、その方が不合理だ。
どの国でも、どの時代でも、平均寿命の一定の割合を生きた人を高齢者と見なしてきた。平均寿命が40代の時代にあっては、平均寿命を超えなければ老人とは言われなかったが、現代では、平均寿命の8割ぐらいの年齢が線引きの境界かもしれない。65歳が8割になるのは81.25歳が平均寿命のときだ。70歳が人生の8割を生きたことになるのは平均寿命が87.5歳のときになる。高齢者の定義は、65とか70とういうような定数ではなく、平均寿命から導かれる関数として定義する方が合理的なようだ。