トヨタ「65歳以上を再雇用」へ、8月から全職種に拡大

トヨタ自動車が、65歳以上のシニア従業員の再雇用を拡大する新制度を8月に始めることがわかった。電動化への対応や自動運転技術の開発などで現場の負担が高まる中、シニアの持つ高い専門知識やノウハウを組織運営に生かす狙いだ。人手不足が続く中、シニアの就労機会を広げる動きが広がってきた。トヨタの定年は60歳で、65歳までの再雇用制度がある。現在、65歳以上の再雇用制度はなく、例外的に約20人を雇用するが、8月からは再雇用の対象を全職種に拡大。高度な知識や技能を持ち、職場からも継続的に働いてほしいと期待されている従業員を対象に、70歳まで雇用できるようにする。給与などの処遇は、現行の再雇用制度に準じて個別に決めるという。
(読売新聞 5月8日)

自動車業界は産業構造の転換点にある。足元で電気自動車(EV)の市場拡大は足踏み状態だが、長期的には、ガソリン自動車のシェアは縮小し、EVや燃料電池車(FCV)に移行していく。その過程では、従来の自動車技術とは異なる領域の新技術の開発や新たな取引先とのサプライチェーンの構築が求められる。このため、自動車メーカーによっては、シニア層をリストラし、それによって削減した人件費を「電動化への対応や自動運転技術の開発」を担う若い層の人材確保に向けようとしてきた。
しかし、EVやFCVの時代になっても必要な技術や業務もある。品質管理もそのひとつだ。トヨタグループで相次いだ認証不正や品質問題をなくすには、現場が問題を感知すると製造ラインを止めることも厭わなかった昔のトヨタを知る世代の知見も役に立つ。シニアを年齢によって、一様に処遇するのではなく、職場が必要とする人材は、年齢を超えて働き続けることができる制度にしておくことが重要だ。