在職老齢年金、廃止含め見直し検討へ

厚生労働省は、一定の給与がある高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金(在老)」について、廃止を含め見直しの検討に入る。今夏にも公表する財政検証の際に合わせて示す「オプション試算」に在老の全廃もしくは一部緩和の方向性を盛り込む。
(中略)
現行の在老では、65歳以上の人で賃金と厚生年金の合計額が月50万円を超えれば、超えた分の半額を厚生年金額からカットされる。人手不足で高齢者の就業率が上昇している中、対象者は約49万人に上る。経済界や与野党から「働き損を意識して年金額が減らないよう就業調整することにつながる」との批判もあり、厚労省は廃止を含めて見直したい考え。ただ、「高所得者の高齢者優遇」との批判もある。
(毎日新聞 4月11日)

長年、議論の的となってきた在職老齢年金が見直される。これまで、在職老齢年金の存続については、賛否が分かれてきた。これは、年金とは加入者の資産なのか高齢者の生活を扶助する基金なのかという問題でもある。加入者の資産であれば、投資に見合ったリターンは当然であり、所得によって減額されるのは不当だ。一方、生活水準を維持するための給付であれば、所得が高い人への給付を減額するのは合理的でもある。
どちらも一理あるが、そもそも、厚生年金を高所得者から低所得者への富の再分配の仕組みとして制度設計することが社会全体として最適なのかを考える必要がある。在職老齢年金を廃止すれば、高所得者の所得は増えるが、その分、所得税も増える。所得税は高額所得者ほど税率が高くなる累進課税であり、日本の税制の中で富の再分配の機能を担っている。仮に、高所得者の高齢者優遇が社会的な問題だとしても、それは、厚生年金ではなく、所得税で富の再分配を図って解決すべき問題なのかもしれない。