介護施設の敷地内にあるホテルで入居者が接客

介護施設で過ごす時間が長くなると、それまで暮らしてきた地域とのつながりが薄れやすいとされます。でも、何らかの役割を担ったり、地域の人たちと交流したりできる「開かれた」施設なら、楽しい出会いもありそうです。
(中略)
広島県尾道市にある「尾道のおばあちゃんとわたくしホテル」。旅行で訪れた保育士の下中歩未さん(27)と会社員の岡里帆子さん(26)を、80代の女性が笑顔で迎えた。昨年にオープンした客室3室の同ホテルは、認知症ケアに特化した施設などを展開する株式会社「ゆず」が運営している。同じ敷地内に、介護施設「ゆずっこホームみなり」があり、通いや泊まりで利用する高齢者が、ホテルの宿泊客をもてなす役割の一端を担っているのが特色だ。
(ヨミドクター 11月28日)

高齢者同士が交流する施設は数多くあるが、高齢者と若い世代が接する機会は限られている。「尾道のおばあちゃんとわたくしホテル」は、高齢者施設とホテルなどの他の施設を併設することで、世代の壁を越えた交流を生みだすことに成功した。高齢者施設にも若い職員はいるが、高齢者にサービスを提供する立場の職員とサービスを受けるためにホテルを訪れる宿泊客では、高齢者とのコミュニケーションの内容が異なる。高齢者にとって、宿泊者との交流は社会の一員であることを実感できる良い機会だ。

加えて、健康な高齢者であれば、ホテルから報酬を得ることができる程度の接客サービスを提供することもできる。このようなケースでは、就労とボランティアの境界を厳密にすることもない。むしろ、業務内容と報酬基準を明確にし、個々の高齢者の適性に応じて自由な形態で働ける環境にすることが重要だ。