シニア3人が育てた「もうけすぎない」直売所

山あいの国道沿いで地元産の山菜や野菜を直売する「ものずき村」は、その名のとおり、物好きな3人のシニアたちが切り盛りしている。「引退した男たちのよりどころを」と思い立ち、「もうダメかと思った」ときを乗り越え、年間9万人が訪れる人気スポットに育て上げた。
 秘境路線として知られるJR只見線。魚沼田中駅から歩いて7分ほど、只見線と並行する国道252号沿いの新潟県魚沼市三渕沢に、ものずき村はある。元土木会社員の仲丸幸(みゆき)さん(83)、高校の体育教師だった酒井功一郎さん(75)、スーパーを経営していた佐藤良孝さん(83)はもともと、山野草の株を交換し合う愛好家仲間だった。「仕事を引退した後も男たちが輝くことができ、みんなでお茶を飲める場所が欲しいな」。そんなたわいもない話から「開村」は持ち上がった。
(朝日新聞 10月13日)

退職後、自ら事業を立ち上げるシニアは増えている。起業にはリスクは付きものだが、「もうけすぎない」という意識があれば、リスクを過剰に取ってギャンブルに出ることもなく、失敗する確率は低くなる。もっとも、成功しても大きなリターンは得られないかもしれない。しかし、シニアが事業を行う目的は、経済的なリターン以外だけでなく、社会貢献やコミュニティー作りなど多岐に渡るものだ。

「ものずき村」は、山野草の愛好家が作り、愛好家の輪を地域の外にも広げることに貢献した。今や、地域の住民だけでなく、遠くから愛好家が集まる施設だ。事業として成り立っているだけでなく、愛好家のコミュニティーを地域外まで広げた意義は小さくない。また、事業として軌道に乗るまでに数年かかったというが、小さな投資に抑えてきたことで、長く持ちこたえることができた。特長のある事業を長く続ければ、その存在が知れ渡る時間を得ることができる。シニアが起こす事業は、無理せず、長く続けることが重要だ。