退職金、勤続30年で税優遇撤廃なら最大45万円減

政府は終身雇用を前提とした退職金課税を見直す。試算によると、同じ会社で20年を超えて働く人が対象の税優遇がなくなれば、勤続30年で退職金2500万円を一時金として受け取る人は最大45万円ほど手取りが減る見込みだ。一時金と年金に分けて受け取れば影響は小さくなるとみられる。
(日本経済新聞 8月12日)

同じ会社で20年を超えて働く人が対象の税優遇をなくそうとしているのは、終身雇用を前提とした退職金課税を見直し、成長分野への労働移動を促して転職市場の活性化につなげることが目的ではない。もし、終身雇用が有利になっている制度を見直すことが目的なら、勤続年数が20年未満の人にも長く働いた人と同等の税優遇を与えればよい。納税額が低い方ではなく、高い方に全体を合わせるというのは、この見直しの目的が税収の増加にあることを示している。

とは言え、退職所得の控除額を勤続年数によらず一定にするなら、長く勤めようとする人が少なくなる可能性は確かにある。ただ、現実には、逆に、退職を抑制する方向に働く可能性もあることに留意が必要だ。たとえば、大企業がリストラをするとき、通常、退職金の上積みを提示して希望退職者を募る。退職金への控除額の減額は、納税額の増額と受取額の減額を意味するため、退職を希望する者は減るだろう。企業が目標とする希望退職者を集めるには、より多くの退職金の上積みが必要となる。