最期まで好きな場所で シニアの住まい、外に開く工夫

「もうすぐ米寿のお誕生日、おめでとう」。6月下旬、神奈川県藤沢市のカフェで10〜80代が集う「お茶会」が開かれた。参加者の大半は2021年にできた多世代賃貸住宅「ノビシロハウス」の住人。その一人、矢田部郁(88)は「若い人と話せるのはいい」と話す。高齢者と若者が交じるのには仕掛けがある。通常家賃は月7万円だが、8室中2室は半額。その分、高齢者へ定期的に声をかけ、異常を感じたら管理会社へ報告する取り決めだ。月1回のお茶会にも参加する。この条件で2室に10〜20代が入る。
(日本経済新聞 7月20日)

高齢化に伴い、高齢者向けの住宅の供給が増加しているが、一方で、若い世代と高齢世代が共に住む多世代賃貸住宅も増えている。高齢者向け住宅では管理費に高齢者への支援サービスの費用が含まれているが、多世代賃貸住宅では、若い世代の賃貸料を高齢者が一部負担することで、若い人が高齢者への支援を行う。一般的に多世代賃貸住宅の方が割安だ。

若い世代にとって賃貸料の割引分は高齢者支援の対価だが、所得になるわけではない。無税の収入となって効率がよい。高齢者にとっても近所付き合いの感覚で若い人と交流できるのは楽しい。プロのサービスではないが、孫と話しているようで、むしろ、親近感が湧く。多世代賃貸住宅は、互いにメリットのある枠組みであり、今後、若い賃借人が多い都市部を中心に全国的に広がっていくだろう。