基本給の格差、最高裁「性質や支給目的など踏まえ検討を
定年後の再雇用について、仕事の内容が定年前と同じなのに基本給を半額以下にされたことが不当かどうか争われた裁判で、最高裁判所は「不合理かどうかは基本給の性質や支給の目的などを踏まえて検討すべきだ」とする考え方を示しました。正規雇用と非正規雇用の賃金をめぐり最高裁が基本給の格差について判断を示したのは初めてです。
(NHK 7月20日)
定年後に再雇用した場合、基本給を6割未満にするのは違法だという判決が続き、6割というのが相場になってきていた。これに対して、最高裁は、合理的な基本給の額は基本給の性質や目的によるとして、事実上、一律6割という漠然とした相場観に基づく判断は不合理だとした。至極、もっともな見解ではある。基本給の性質や目的によっては、6割より低くてもよいかもしれないし、6割より高くするべきかもしれない。適切な給与水準は、本来、個々の事案によって異なるはずだ。
ただ、基本給の性質や目的は、従来、労使双方ともあいまいにしていることが多かった。基本給を厳密に定義すると運用が面倒ということもある。たとえば、本件において、再雇用者は役職に就かないなど「正社員の基本給とは異なる性質や支給の目的がある」と最高裁は指摘したが、そうだとすると、50代で今後役職に就く可能性のない正社員の基本給は引き下げるべきなのかという問題も生じる。今後、同様の争いをなくすには、基本給の性質や目的を明文化して、その算出根拠を予め明らかにしておく必要がある。