高齢者の労災リスク最小限に、ヒヤリ・ハット共有

シニアを雇用する上で企業が気にするのは、身体機能や認知能力の低下に伴う高齢者ならではの労災リスクだ。シニア雇用に力を入れる静岡県内の企業では、ヒヤリ・ハットの改善を徹底したり、従業員とのコミュニケーションを密にしたりして、労災リスクを最小限に抑える工夫をしている。
(中略)
金指さんは荷物を持ったまま倉庫内の階段を上り下りしてつまずきそうになった経験をヒヤリ・ハットの事例として報告し、小さな荷物でも階段を使わずリフトで昇降する方法に改善した。管理職は日常的な声掛けや熱中症対策などを通してシニア従業員の体調管理にも気を配る。
(静岡新聞 7月16日)

危険を感じてヒヤリとしたり、ハットしたりすることは誰にもあることだが、ヒヤリとしたりハットしたりした経験は、体力が徐々に衰えることが想定される高齢者にとって、特に、重要な意味を持つ。ヒヤリ・ハットが発生した状況は、より体力が低下した場合には、事故になりかねないケースだ。ヒヤリ・ハットの事例を個人の記憶に留めるだけでなく、組織内で共有し、対策を講じて、事故の予防につなげることが重要になる。

一般に、ヒヤリ・ハットの事例の分析では、そのリスクを顕在化させる、つまり、実際の事故になる要因は何かを明らかにして、有効な対策を検討することが必要だ。高齢化による体力低下はその要因の一つだが、金指さんの荷物の持ち運びの例で言えば、荷物の重さ、持ちにくさ、形状など他の要因もあり得る。高齢化以外の要因を軽減することで、高齢化による事故発生のリスクを低減させることができる。