45〜64歳の転職希望、5年で3割増 終身雇用優位薄れる

労働市場で終身雇用の優位性が薄れ、転職を探る中年層が増えている。総務省によると45〜64歳の転職等希望者は2023年1〜3月平均が378万人と、5年前の18年同期比で3割以上増えた。同じ会社で長く働く人と転職者との賃金差は縮小し、転職希望者への追い風となる。
(日本経済新聞 6月20日)

同じ会社で長く働く人と転職者との賃金差が縮小していることが、直ちに、転職希望者への追い風となるかどうかは分からない。賃金差が縮小している原因は、中高年層の転職者の賃金が上昇したからというより、年功序列が崩れて同じ会社で働く中高年の賃金がそれほど高くなくなってきたからだ。地位も賃金も上がらないなら、転職をしてみようと考える中高年は増える。実際、45歳以上の転職希望者の増加率は、他の世代より高い。

ただ、転職希望者が増えれば、その中の有能な人材も増える。そうなれば、求人数も増加し、転職市場の規模は次第に拡大していく。企業内に囲い込まれていた人材が、労働市場に出て、より能力を発揮できる企業へ転職していく流れができれば、社会全体にとって労働力の最適化が進む。問題は、より能力を発揮できる転職を社会全体でどのようにして増やしていけるかだ。