いきいきシニア「元気の源」は
県営かもめ団地の向かいにある「小磯薬局」。白衣に身を包んで背筋をピンと伸ばし、若手スタッフに混ざって矍鑠(かくしゃく)として働く磯崎貞夫さん。御年89歳の現役薬剤師だ。この道一筋60余年。仕事、トレーニング、趣味にアクティブな自らの身をもって、同じく薬剤師で妻の瑛子さん(87)とともに患者の健康意識の醸成やQOL(生活の質)の向上に注力している。「あと5年は頑張りたいね」。意欲みなぎる言葉は、今年卒寿を迎えるとは感じさせない。
(タウンニュース横須賀版 5月5日)
医師や薬剤師のように国家資格が必要な仕事は、高齢になっても仕事を続けることができる。大きな病院を定年退職した後も開業すれば、自分の健康と就労意欲が維持されている限り、働くことは可能だ。とは言え、89歳まで現役薬剤師として勤務しているのは珍しい。恐らく、妻が開業した調剤薬局で「患者の健康意識の醸成やQOLの向上に注力している」ことが、自分自身の健康意識の醸成やQOLの向上につながっているのだろう。
仕事を通じて社会に貢献しているという実感を得られることは、就労意欲を維持する上で重要だ。磯崎さんは、患者の喜ぶ姿に接することで、マズローの言う承認欲求を満たされ、さらに、地域住民の健康に貢献するという使命を達成しているという実感も得て、自己実現欲求にも応えられている。
磯崎夫妻の場合は、自身がオーナーである薬局で働いているので、裁量の幅が大きいが、企業のような組織の中では、従業員自身が決められることは少ないかもしれない。しかし、企業が雇用機会を提供する場合でも、従業員が持つ承認欲求や自己実現欲求への配慮が欠かせない。特に、高齢者の場合は、働く意義を見出せる環境の整備が大切だ。