平均60歳「シニア営業」が稼ぐ医薬
化学中堅の太陽ホールディングス(HD)が2017年に参入した医薬品事業を急速に伸ばしている。参入後の年平均成長率は2倍を超え、連結売上高の2割を占めるまでに成長した。原動力は製薬大手から転じたシニア人材だ。週3日の勤務など個人の事情に合わせて働けるようにし、それぞれが長年培った経験や能力を発揮している。
(日本経済新聞 4月9日)
新規参入企業が事業の立ち上げに際して、競合他社から人材を集めることは珍しくない。この場合、競合他社とは、商品のシェアでも人材獲得でも競合することが多いが、太陽HDは、他社が撤退したいと考えていた「長期収載品」と呼ばれる医薬品に参入することで、他社との競合を避け、むしろ、協力もしている。
長期収載品は、特許が切れた先発薬で、薬価が低下し、収益率が低い。資本効率を重視する大手製薬会社にとっては、整理したい製品だ。事業全体を売却するか、製造、販売の権利を売ることになる。このとき、この製品を担当してきたシニア人材も会社を移れば、大手製薬会社にとっても、事業を引き受けた太陽HDのような企業にとっても、そして、転職するシニア人材にとっても望ましい。医薬品業界という特殊な業界の例ではあるが、事業の移転に伴うシニア人材の移動という点では、他の業界でも参考になる。