日銀・黒田総裁が退任会見、これからの過ごし方は
日本銀行の黒田東彦総裁が7日午後、退任会見を開き、10年務めた同職を退任した後の過ごし方について語った。
(中略)
「総裁を退任した後はどのように過ごすのか?」。このような質問が出ると、「私も78歳なので、フルタイムの仕事をする気は全くない。できたらどこかの大学で教えたりすることは考えたいなと思っているぐらいだ」と答えた。
(ABEMA TIMSES 4月7日)
高齢者雇用安定法で70歳までの就業機会確保が努力義務になる中、日銀総裁は78歳と高齢だった。時々刻々と変化する世界経済を相手に、時として即断即決を求められる日銀総裁は、かなりの激務だが、能力があれば高齢でも務めることはできる。後任の植田総裁も1951年生まれの71歳だ。
日銀総裁は、東大法学部と東大経済学部の出身者が交互になるのが慣例になっている。例外は、1998年に総裁に就任した一橋大学出身の速水総裁だけだ。このときは、大蔵省・日銀の接待汚職疑惑の責任を取って日銀の総裁と副総裁が退任した直後で、当時の橋本総理が異常事態を収拾するために決断した例外的な人事だった。今回の植田総裁も学者出身という点では異例の人事ではあるが、東大法学部出身の黒田総裁の後任に東大経済学部出身の人がなったという意味では、既定路線を踏襲している。ただ、東大経済学部卒であれば誰でもよいというわけでもない。日銀総裁は、国内だけでなく、国際的な信用と調整能力が問われる。その点、黒田氏にしても、植田氏にしても欧米に対して一定の影響力を持っている人材だ。
その黒田前日銀総裁は、退任後はフルタイムの仕事はせず、政策研究大学院大学のシニア・フェローに就任した。日銀総裁として蓄積してきた専門的な経験の見識を若い研究者と共有することには、社会的な意義がある。フルタイムではなくても、求めに応じて経験とノウハウを後進に伝えるという仕事の仕方は、多くのシニアの参考にもなる。