ANA、50代にリスキリング 会計士など専門資格取得も

ANAホールディングス(HD)は2023年度から、50〜58歳を対象にリスキリング(学び直し)プログラムを始める。社内のコンサルタントが半年間併走し専門資格も取れるよう支援する。21年の改正高年齢者雇用安定法の施行で70歳までの就業機会確保が努力義務となり、中高年社員のキャリア開発を支援する企業は増えている。同社の新制度はモデルとなりそうだ。
50代社員の割合はグループ全体の約15%。新制度は傘下の全日本空輸(ANA)社員の希望者30人程度で始め、順次広げる。希望者が多い場合も、選抜は行わず参加できるようにする。メニューは希望に応じて自由に選べる。民間のオンライン学習サービスのほか、社会保険労務士、応用情報技術者、会計士といった専門的な資格の取得も目指せるようにする。デジタル分野のスキル取得も想定している。
(日本経済新聞 3月28日)

新入社員や若手社員だけでなく、退職年齢が延びているシニア層に対しても教育機会を提供する企業が増えてきた。ただ、規模の大きなANAグループといえども、必要な公認会計士の数は限られているので、恐らく、社外需要も見込んでのリスキリングなのだろう。リスキリングのやり方だけでなく、リスキリングを終えた社員の活用についてもANAの事例は参考になる。

もっとも、50代向けのリスキリングで公認会計士を目指すことができるのは、高偏差値の世界を生きてきた社員が多いANAグループのような大企業に限られる。ANAグループの事例は、同ランクの大企業の中ではリファレンスモデルとなるが、中小企業で同じ目標を掲げるのは難しい。しかし、中小企業でも、事業に関連は高いが、その従業員にとっては経験が少なく、ノウハウを蓄積する機会がなかった分野の専門資格の取得を目指すことは可能だ。適切な目標設定を行えば、シニア社員に対するリスキリングは一定の成果を上げることができる。問題は、事業規模が小さいことより、目標設定とその目標達成をシニア社員自身が望むようになるモチベーションを如何に高めるかだ。